道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 子供の頃の話。お正月になると僕はわけもなくウキウキしていた。新年の挨拶を済ませると、お年玉をもらった。それを自分で郵便局へ預けに行くと、奴凧がもらえた。それを揚げて遊んだりした。それからお餅である。お雑煮、おしるこ、きな粉餅、一番好きだったのはそのまま油で揚げて、醤油と味の素をたっぷりとかけて食べるやつである。これはもうたまらなく美味しかった。やがて年賀状が届くと、ポストからそれを持ってきて宛名別に分ける。圧倒的に父親宛のものだが、稀に自分宛てのものがあると、宝石を見つけたように嬉しかった。そして夜のお楽しみは何と言っても「新春スターかくし芸大会」である。普段は見れない組み合わせでやるコントに、腹を抱えて大笑いしていた。さらに我が家では恒例の家族麻雀大会が開催された。商品はミカンである。そして正月のクライマックスは「どんど焼き」である。リヤカーで町内の正月飾りやダルマを集めて回って、それを田んぼに積み上げ、キャンプファイヤーのように燃やすのである。底冷えのする真冬の夜に、白い息を吐きながらその火柱を見上げているのは何とも言えない気分だった。

 結局、僕らがウキウキしていたのは。「普段と違う」ことが味わえるからだった。大人たちも何となくいつもよりおおらかになっているような気がした。夜更かししても怒られなかったし、テレビを見ても文句を言われなかった。そして新しい年になって、真っ新なノートを開いたよう気分。今年はどんなことが待っているのだろうかというワクワクした気分。

 そして平成31年の正月である。父親となった身としては、息子にも正月の特別感を味あわせたい。しかし、悲しいかな息子は昨年末から歯の矯正を始めており、今年の正月はお餅を食べることができない。東京では凧を揚げることも難しい。どんど焼きなんてやってない。そして新春スターかくし芸大会も、放送終了となって久しい。

 そこで今年は、ダラダラすることにした。初詣は行ったけれど、後はあまり外出しないで、家でごろごろする。ゲームで遊ぶ。ずるずるとテレビを見る。そういう特別感を味わってもらうことにする。息子もその気になって、「明日は1日中ゲームだぁ!」とか言っている。しかし、親としてはだんだん不安になってくる。変な癖をつけてはいけないと思う。そういえば学校のプリントに「規則正しい生活を心がけましょう」とか書いてあったな。結局、少しダラダラして終了となった。息子は正月を楽しいものとして認識できただろうか。