道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 今年は年明けから公私共にバタバタして、疲れてしまった。正月休みが済んだばかりであるが、また休暇をとって心身を休ませたいところである。まあ考えてみれば、お正月がめでたくて、のんびり過ごせるというのはイメージであって、いいことも悪いことも普段と変わらずやってくる。「新年早々悪いこと続きで」とか考えるからいけないのだ。

 そんなある日の帰り道、いつもの電車に乗って、吊革につかまってほっと一息着いたところで、前の席に座っていた中年の男性(おそらく50歳前後)が、おもむろに立ち上がり、僕に向かって「どうぞ」と言った。僕はしばらく何のことか理解できずに固まっていたが、その席が優先席であることに気づき、席を譲られたということを理解した。その時、僕は思わず苦笑いを浮かべて「大丈夫です」と言ってしまった。その男性は、ちょっと困ったような顔をして、またその座席に腰掛けることになった。何となく居心地が悪そうだった。

 僕はその時仕事の帰りで、ビジネスバックを襷掛けにし、フード付きのコートを着て、スニーカーを履いていた。(私服OKの職場なのである。)なぜそんな僕に席を譲ろうとしたのか考えた。僕は年齢の割には白髪が多い。そしてだいぶ薄くなってきている。そして多分疲れた顔をしていたに違いない。(仕事でのトラブルがなかなか解決できず、悩んでいた。)そして、年齢的にももう60歳間近である。客観的に考えると、優先席を譲る対象に見えるかもしれない。ところが自分では全くそんな風に考えたことがなかった。そうか、周りからはそう見えているのかと少なからずショックを受けた。それと同時に自分のふるまいを反省した。よく席を譲られて怒り出す年寄りがいると聞くが、これは他人事ではない。席を譲ろうとした人に気まずい思いをさせてはいけない。これからはありがたくお受けするか、優先席の前にはなるべく立たないように気をつけよう。

 そんな風に僕は老人デビューを飾ったのである。