道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 僕は通勤経路上、銀座で乗り換えている。銀座線から有楽町線に乗り換えるのだが、地下通路ではなくいったん地上に出てから再び地下鉄の入り口を下りていくことになる。つまり毎日銀座の目抜き通りを歩くことになる。

 そもそも銀座とは全く無縁な人生を送ってきた。若い頃は銀座なんて興味がなかったし、歳をとってからも銀座で遊ぶような身分にはならなかったので、せいぜいテレビで見るか、池波正太郎のエッセイで読むくらいだった。まあ、仮に金持ちになったとしても銀座で豪遊なんてしたくない。いや、そうでもないかもしれない。人間、大金持ったらどうなるかわからない。だがありがたいことに大金持ちになる予定は全くない。おかげでマトモな人間でいることができる。何をもってマトモというのかはよくわからないが。

 銀座の中央通りは世界のブランドショップがひしめいている。僕は広い歩道に溢れる外国人の群れを避けながら地下鉄の入口を目指して歩く。ヴィトンやシャネルの入り口には入店待ちの長い列ができている。今この通りを歩いていると、日本語を耳にする機会はほとんどない。飛び交っているのは外国語ばかりである。日本人は皆、スマホを覗き込み、イヤホンをして黙々と歩いている。まるで植民地のようだ。我々が働き、彼らが遊ぶ。僕は愛国主義者ではない。全然ない。でもそんな光景を目の当たりにするとちょっと憂鬱な気分になる。たぶんあの外国人達がいなくなったら、ブランドショップは軒並み撤退していくだろう。日本人にはこの銀座の華やぎ維持する力はもうないのだ。別に維持しなくたっていいと思うけど。

 そんな通りを、僕は毎日歩いている。ふと昔を思い出す。学生時代、きれいな服を着て渋谷の街を歩く人々を眺めながらビラ配りをしていた。歳をとってもゃってることは大して変わらないな。僕は華やかな街や人々を横目で見ながら足早に通り過ぎる。そして自分がホッとできる場所へ帰っていくのである。