道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話<2006.11>

八重山純情編−

 「南の島」という言葉で僕がイメージするものは、小さな無人島である。小さな島の真ん中に椰子の木がひとつ、その根元に髪や髭が伸び放題になった男が体育座りをして遠くを眺めている。そんな絵を小さい頃見た記憶がある。それは僕にとってとても魅力的な光景であった。本や映画などでもよく取り上げられるテーマで、結構多くの人がそういうものに憧れを抱いているのかもしれない。
沖縄に行くことになった時、最初に僕の頭の中に浮かんだのは、やはりそういうイメージであった。誰もいないビーチに静かに打ち寄せる波、風に揺れる南国の木々。そんなわけで、初めての沖縄旅行がいきなり離島巡りということになった。ガイドブックを買い込み、熟読した結果、石垣島を拠点にして八重山諸島を巡ることにした。竹富島小浜島西表島波照間島……訪れたい島は沢山ある。しかしいくら本を読んでも、なかなか具体的なイメージまでは見えてこない。そこで僕は、沖縄にすっかりハマッている友人に相談することにした。すると何と彼も同じ時期に沖縄へ行くという。しかも彼は八重山諸島ではなく、宮古島を激しく推奨するのである。結局、前半は八重山諸島を観光し、後半は宮古島で彼と合流して遊ぶことになった。当初の計画は崩れたわけだが、この計画変更が予想外の結果を生むことになった。
 石垣島に着いた日は、行き違いやトラブルがあって、暗い気分でチャンプルーなんかをつついていたのだが、二日目からは何とか順調に予定をこなした。そして夜に宮古島へ移動するという日、僕らは船に乗り、竹富島を訪れた。中心部に古い街並みを守った集落があるだけで、数時間もあれば自転車で一周できるような小さな島である。この島の観光の目玉である水牛車に揺られて集落を巡った後、僕らは自転車を借りてビーチへ向かった。ガイドブックでその浜の写真を見たときから、そこが僕の求めているイメージに一番近いような気がしていたのだ。そして、それは本当にそこにあった。真っ白な砂浜、エメラルドグリーンの海、風に揺れる南国の木々。聞こえるのは波音だけである。僕はしばし呆然としてその光景に見入った。僕らが自分の中で作り上げたイメージは多くの場合、実際にそれを体験することによって少なからず損なわれてしまう。しかしその時僕が目にしたものは、イメージを凌駕するような現実であった。僕はトラブルもチャンプルーも水牛もすべて忘れて、ただそこに立っていた。