若い頃から見聞きしてきた人たちがどんどん故人になっている。自分が歳をとっているのだからまあ当たり前と言えば当たり前であるが、訃報を聞く度に「ああ、あの人も・・・・・」という思いを抱かざるを得ない。まだ高齢とは言えないような人が亡くなると尚更である。テレビに出ているような人たちはどちらかというと生身の人間という感覚が薄いので、なんとなくずっとテレビに出続けているものだと錯覚してしまっている。だから余計にそう感じてしまうのかもしれない。
誰が死んだらショックを受けるだろうか。(不謹慎だな。)俳優では松田優作、高倉健、大滝秀治、原田芳雄あたりはショックだったな。もっとスクリーンで見たかった人たちである。それ以外にも事実上引退している人たちもいる。世代交代といえばそうなのだが、強烈な存在感を放つ役者が減ってしまったような気がして寂しい。ミュージシャンではどうだろうか。こちらは幸い僕の愛好する人たちはまだまだ現役で頑張っているようだ。もし、死んでショックを受けるとしたら・・・・・いや、止めておこう。そもそも僕が愛好するミュージシャンたちは、既に素晴らしい作品を残している。それらはいつでも手に取って聴けるのである。だから本人がいなくなったとしても、あまり喪失感はないかもしれない。そもそも、もうずいぶん好きなミュージシャンのコンサート(あるいはライブ)というものに行ってない。だからやはり生の人間としての感覚が薄いのである。そもそも、次の新譜を心待ちにしているミュージシャンがいない。あれ、おかしいな。音楽に興味がなくなったのかな・・・・。
そんな中、南正人死去のニュースは僕に少なからず感慨をもたらした。まずヤフーニュースに掲載されたことに驚いた。コメント欄を見ると、知らない人がほとんどだったけれど。僕は、今は無き渋谷アピアで彼のライブを偶然見たことがある。そのインパクトは強烈であった。それまでは名前くらいしか知らなかったのだが、それからCDを買って聴くようになった。しかし狭いライブハウスで聴いた彼の歌は、どのCDの音よりも圧倒的だった。その場にいないとわからない凄みというのは貴重であり、かつ不幸である。人にその良さを伝えることは限りなく難しい。とにかく生で見てごらんとしか言いようがない。
ニュースにならないところで、ひっそりと消えていった素晴らしいミュージシャンがいったい何人いたことだろう。そしてこれからも彼らはひっそりとこの世を去っていくに違いない。とても小さな爪痕だけを残して。