道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 先日実家に帰ったら、買ったばかりの車がまた違う車になっていた。話を聞くと、信号無視の車にぶつけられて壊れてしまったので代車に乗っているのだという。その少し前には母が転んで足の骨を折ったというし、最近親戚との間がうまくいっていないというし、そんな話を散々聞かされる羽目になった。仕事もやめて田舎でのんびり余生を送っていると思っていたのだが、人間歳をとってもいろいろと大変である。
 今年の夏はあまり時間がなくて、実家に一泊しただけであった。あわただしかったけれど、やはり気分転換にはなった。しかし、里帰りがやっつけ仕事ではなくなったのはいつからだろうか。昔はあんなに憂鬱だったのに。
もともと早く実家を出たくて、高校卒業と同時に東京へ出て一人暮らしを始めた。その頃は親や地元の付き合いがとにかく煩わしく、早く一人きりになりたかった。だからもちろんホームシックなんて全くなかったし、なるべく里帰りはしたくなかった。それでも親の仕送りで暮らしている手前、年に一回くらいは顔を出していた。しかし実家に居るのがつらくて、友人と飲みに行ったりすることが多かった。
 一人暮らしが長くなるにつれ、親に対する不快感もしだいにうすれていった。しかしまともな職にもつかず、親に心配をかけっぱなしであったし、金もないので、親孝行といえば顔を見せることぐらいしかできず、そんな理由で実家に帰るようになった。
 そのうちふと、田舎の風景や食べ物なんかに興味を持つようになった。もともと僕の実家の辺りは安曇野と呼ばれ、観光客が訪れるような場所だったのだが、育った人間にとってはただの田舎町だった。しかし長い間離れているせいで、最近は観光気分で実家に帰っているようだ。もともと地元の付き合いに愛着を感じていたわけではないので、旅行客になりきってしまえば気楽なものである。高校時代に好きだった女の子にばったり会うんじゃないかなんてドキドキしながら町を歩くことももうない。
 とは言っても実家には実家の生活があるわけで、全くの観光客というわけには行かない。それでも都会では見られない景色を見て、普段口にしないものを食べて、ただで寝泊りできるのというのは有難いことである。そんなことをのん気に言っているだけではもちろん済まされないのだけれど。