道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 月を見るのは好きだ。夜空に浮かぶその姿は、季節や天候によって実にバリエーションに富んでいる。白い月、黄色い月、赤い月、大きな月、小さな月、満月、三日月などなど。夜は物想う時間である。その夜に輝く月は、やはり人々の想像力をかきたてる格好の素材である。月にまつわる物語や歌は枚挙に暇がない。恥ずかしながら、僕も少なからず歌詞の中に月を登場させている。
 しかしながら、僕は「お月見」をしたことがない。今日が中秋の名月だと聞いて、窓から空を見上げるくらいのことはする。しかし、ススキや団子を飾って縁側で酒を飲むとか、老舗旅館で「月見の会」を催すとか,池に舟を浮かべて一句詠むとかいったようなこととは全く無縁であった。そもそも月見団子なるものを食べたこともない。子供の頃から頭の中にイメージはあるのだが、それを実際に体験したことはないのである。
ところが、期せずして今年は月見団子を食べることができた。息子が「お月見」の開催を激しく主張したからである。どうやら幼稚園で「お月見」について聞いてきたらしい。他にも季節の行事などについていろいろと話を聞いてくるようだが、今回ことさらに熱心だったのは、多分「月見団子」のせいである。「お月見」=「団子が食べられる」ということで彼が盛り上がってしまったのは疑いの余地がない。
 主張した甲斐あって、彼は無事月見団子にありつくことができた。残念ながら「お月見」には間に合わなかったが、僕も彼のおかげで生まれてはじめて月見団子を口にすることができた。それは何の変哲もないただの団子である。しかし、彼にとっては生まれて初めての団子である。さぞ嬉しかったに違いない。
 幼稚園は、さまざまな知識を息子に提供してくれる。それはとてもありがたいことではある。その結果、親も今まで考えても見なかったことを(そして自分ひとりなら絶対にやらないだろうというようなことを)経験することになる。ただ少し困るのは、息子が余りに具体的なイメージを持ってしまうと、親子ともども現実とのギャップに苦しむのではないかということである。「夏休み」は何とかクリアした。「お月見」も済ませた。そして先に待っているのは「クリスマス」である。クリスマス・ケーキに鳥モモにその他もろもろのご馳走。そしてクリスマス・プレゼント。間違いなく彼の想像力はフルスロットルである。それをどこに軟着陸させるか、今から考えておかなければならない。なぜなら、年末は「あっ」という間に来るからです。