道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 大病院であろうが、町医者であろうが、こと混雑に関する限り、どこも大差はない。予約制のところだって、決められた時間に行っても結構待たされる。一体何故なのだろう。病院の数が足りないのだろうか。それとも病気を抱えている人がとても多いのだろうか。あるいは以前だったら自然治癒に任せて放っておいたような些細な病気や怪我に対して、人々が熱心に治療するようになったのだろうか。いずれにしても、僕が初めて訪れた近所の皮膚科も、朝から待合室はぎっしりであった。受付で「一時間くらいはお待ちいただくことになると思いますが、よろしいですか?」と言われた。「よろしくありません」と言ったところで順番を早くしてくれる訳でもなさそうだったので、僕は頷いて、ベンチシートの端っこに座って待つことにした。
 皮膚科というと、何となく瘡っかきが集まっているような偏見があったのだが(すみません。)、待っているのはごく普通の人達である。一見して皮膚にトラブルを抱えているような人は見当たらない。多分皮膚科に来る理由は様々なのだろう。もちろん僕だって皮膚にトラブルを抱えているようには見えない。帽子を脱がない限りは。
二時間ほど待って名前を呼ばれた。診察室に入ると、五十代位のとても元気そうな先生が座っていた。おまけにこの先生はとても大声である。薄いドア一枚の待合室で待っている時から嫌な予感はしていた。僕が帽子を取って、事情を説明すると、彼は頭を覗き込んで、無造作にあちこちの髪の毛を引っこ抜いた。その後で「ちょっと抜け方が急激なので、検査もしておきましょう!」と言って、尿検査と血液検査をすることになった。「抜けるのが止まったら、生えてきますから!」と言われ、頭に軟膏を塗り、薬を処方された。僕は帽子をしっかりと被り直して、待合室に戻った。
 幸い、検査結果に異常は無かった。それから一ヶ月ほど経過したが、まだ脱毛は完全には止まっていないようである。どこまで投薬治療するべきか判断が難しいが、もうしばらく続けて様子を見ようと思っている。ちなみに、その元気な皮膚科の先生は、立派な禿頭である。
 根気と時間と金を要する通院だが、一つだけ良いことがある。一時間程度、集中して本が読めることだ。今、日々の暮らしの中で読書にそれだけの時間を割く余裕はない。だから通院の日は、読みたい本を鞄に詰めていそいそと出かけていくのである。