道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 今年の息子の誕生日は休日であった。せっかくだから、どこか彼が楽しめるところへ連れて行ってやろうということになった。最近よく観覧車に乗りたいと言うので、探してみたのだが、なかなか手頃なところが見つからない。まだ小さいので、「行列で90分待ち」なんていうのはどだい無理である。そもそも親が参ってしまう。インターネットでいろいろと検索しているうちに、とある遊園地が目にとまった。そこは家からも近く、規模も小さい。そして都内唯一の屋上遊園地だという。写真を見ると、昔ながらのデパートの屋上にある遊園地である。小ぢんまりとした観覧車も写っている。僕の求めていたイメージにぴったりである。普段はなかなか決断に時間のかかる人間なのだが、即決して直ちに出かけることにした。
 デパートの食堂街で早めの昼食を済ませて、屋上に上がった。天気が良かったせいもあって、それほど寒くはなかった。混み具合も理想的である。遊園地全体のくたびれ具合も非常によろしい。早速お目当ての観覧車に乗ることになった。本当に小さな観覧車だったけれど、屋上にあるせいか、意外と眺望を楽しめる。一周する時間も子供が飽きない程度である。それ以外にも100円〜200円程度で楽しめる乗り物が幾つもあって、気に入ったものに幾つか乗った。気がつくと結構お金を使っているのだが、入園するだけで何千円もとるような施設に比べれば、断然安い。そして3・4歳の子供が遊ぶにはこれで十分だと思う。こういう遊園地が近くにあったことに、僕は非常に満足した。
 そろそろ引き上げようかと言うと、彼は不服そうな顔をした。もともとエンジンがかかるのが遅い子である。やっと遊園地というものに馴染んできて、さあこれからというところだったのかもしれない。しかし親には親の都合もある。最後にもう一回だけ観覧車に乗って帰ることにした。また遊びに来ようねと言いながら。
 僕が小さい頃、デパートは夢の場所であった。祖父の家に遊びに行くと、必ず街に一つしかないデパートに連れて行ってくれて、レストランでお子様ランチやアイスクリームを食べ、屋上の遊園地で遊んだ。それが夢の場所であったのは、田舎だったせいかもしれない。そんな場所はそこにしかなかったのである。普段は川原や山の中を走り回って遊んでいたのだから。今、都会の子供の夢の場所とはどんなところだろう。僕は帰りの電車の中で、そんなことをぼんやり考えていた。