台風が通り過ぎた翌日、僕らは電車で伊豆高原へ向かった。今回は節約のため、各駅停車を乗り継いでの旅である。幸いお盆前の平日のせいか、どの電車も座ることができたので、時間はかかったけれど快適な移動であった。以前、やはり旅費をケチって名古屋まで各駅停車で行ったことがあるのだが、全く椅子に座れなくてヘトヘトになった。それを思えば天国みたいなものである。
伊豆高原の駅に着いて宿の送迎の車に乗り込んだ。「高原」というくらいだから、きっと涼しいのだろうと思っていたら、とんでもない、東京と同じくらい暑かった。まあ伊豆は伊豆だし、海抜もそれほどではなのだからあたり前なのだが、名前からうっすら期待してしまった僕の負けである。チェックインを済ませ、エアコンがガンガンに効いた部屋に入ってほっと一息ついた。
泊まる宿は、林の中に点在しているコテージである。斜面に建っているせいで一見平屋に見えるのだが、玄関を入るとそこが２階になっていて、階段を降りたところに１階のベッドルームがある。ちょっとした隠し部屋のような雰囲気だ。息子にそこは君の部屋だから好きに使っていいよと言うと、その部屋へ入ったきり、いっこうに出てくる気配がない。しばらくして様子を見に行くと、棚に自分の持ち物を並べて、ベッドに寝っ転がってテレビを見ていた。どうやら自分の部屋がまだもらえない鬱憤を晴らすつもりらしい。それで気が済むんならと、しばらく放っておく。
今回の旅行のテーマは「家族でバーベキュー」である。同じ敷地内にバーベキューハウスがあって、その中でバーベキューを楽しむのだが、時間になって行ってみると、どうやらその時間帯にバーベキューを申し込んだのは僕らだけであったようだ。がらーんとした会場で、のんびりとバーベキューをする。気楽だけれど、もう少し華やぎも欲しい。しかしバーベキュー自体は美味しかったし、量もたっぷりとあった。久しぶりに肉を嫌というほど食べた。
花火もやって、温泉にも入って、息子は大満足である。僕は、まあそれなりにといった程度である。悪くはないんだけれど、取り立てて良いところもない。もう一度来たいかと訊かれたら、たぶんしばらく考えてから首を横に振ることになるだろう。
翌日は海辺のプールへ行って、丸一日過ごした。日焼け止めをちゃんと塗らなかったせいで、しばらく体が悲鳴をあげていた。それが僕の今年の夏休みでありました。
