道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

  息子の執拗な要請に根負けして、子供部屋を作ることになった。作ると言っても、リフォームして新たに一室を確保するということではない。物置部屋と化していた一部屋を片付けて、彼専用の部屋にするのである。

 狭い部屋ではあるが、出窓はあるし、窓からの眺めも悪くない。ただ、問題は山と積まれた荷物をどうするかである。他の部屋の収納もかなり手狭になっている。まずは荷物を運び出して置く場所を確保しなくてはならない。2月くらいから少しずつ物を運び出して、何とか3月中に彼に部屋を提供できることになった。勉強机を置いて、ベッドを新調して(部屋にベッドを置いて寝ることが彼の最大の夢であった)、彼のガラクタ(彼にとってはどれも大切なものであるらしいが、どう見ても無用の長物ばかりである)を収納に詰め込んで、どうやら子供部屋っぽくなった。そして他の部屋が運び出された荷物で少し狭くなった。

 息子は今年小学6年生である。彼曰く、友達は既にみんな自分の部屋を持っているという。真偽の程は定かではないが、今の時代、そんなものかもしれない。僕だって小学6年生になる時に部屋をもらったのだ。2階の六畳間で、とても日当たりがよかった。それまで薄暗い四畳半に、兄弟2人で勉強机を並べていたことを思えば、夢のような気分だった。飽きてくるとよく勉強机をズルズル引きずって模様替えをした。東側の窓辺に机を置くと、はす向かいの家の二階の窓がよく見える。そこは同学年の女の子の家で、多分2階がその子の部屋で、眼が合ったらどうしようなんて考えてドキドキしたものである。部屋の中にいる限り(そして突然誰かが入ってこない限り)、僕は全くの自由であった。特に反抗期を迎えてからは、親の目を逃れる場所があったことはとても有難かった。自分の部屋に入ることで僕は解放され、好きなことに没頭することができた。夜中に窓を開けて、星空を眺めながらエア・サプライの「ロスト・イン・ラヴ」を繰り返し聴いたりした。(ベタですみません。)

 息子は自分の部屋でどんなことを考え、どんなことに没頭するのだろうか。まあ、たぶん親が困るようなことを考え、親が困るようなことをするのだろう。子供なんてそんなものだ。そういうことをしながら、自分というものを作り上げていくのである。そしてそのうち、部屋では飽き足らなくなって、家を出ていくのである。そして子供部屋は主を失ったまま存在し続けることになる。時々帰ってくることを待ち望みながら。