道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 古来、競争のない立地に存在する食堂というのは、クオリティを求めるものではなかった。食堂があればよしという世界だったのである。国道沿いのドライブインとか、観光地の施設内にある食堂とかがそれだ。目的が食事ではなく、たまたま昼になったのでどこかで食事をとろうということであれば、それでよかったのかもしれない。そして昔はみんな食堂にそれほどクオリティを求めていなかった。ラーメンであればよし、カレーがあればよしといった感覚だったように思う。そもそも、ラーメンなんて滅多に口にすることがなかったので、ラーメンであるだけでもう大満足だったのである。

 それがいつからか、店側も客もクオリティを求めるようになった。グルメなんて言葉が横行するようになった。人々は様々な情報を入手して旅行先を選択するようになり、観光だけでは集客が厳しくなった。付加価値としての食事は、どんどんその地位を向上させていった。全国的に有名なチェーン店を出店させたり、ご当地グルメなんてものを作り出したりした。食のテーマパークなんてものが観光地になったりした。随分と豊か(というか、贅沢)になったものである。

 そんな中、頑固に(というか、旧態然として)存在し続ける昔ながらの観光地もある。そこでは、今も懐かしい「あればいいじゃない」的な食事を堪能することができる。僕らが温泉帰りに立ち寄った観光地はまさにそういうところで、施設内にいい感じの食堂が寄り集まっていた。それぞれの店から好きなものを持ち寄って食べられたので、家族は思い思いの店に散っていった。僕は王道のラーメンを選択した。出てきたものは、まさに昔懐かしい観光地のラーメンであった。でも、それでいいのである。そのラーメンは予定調和の中に存在しているのだ。施設側の思惑、立地、客の目的、不満、諦め、悟り。それらすべてが不思議なバランスで成り立っている。不当に高い値段で、ご当地グルメを満喫しに来たわけではないのだ。

 僕は総合的に判断して、納得した。