道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 その日、僕らは深川にいた。深川といえば江戸情緒の残る下町というイメージである。東京に長く住んでいるけれど、このあたりを訪れる機会は今までまったくといっていいくらいなかった。正直、場所も何区かもまったく知らなかった。(江東区でした。)最寄り駅を調べ、電車に乗ってでかけた。まあ、どんなところか散策してみようということである。
 着いたのはお昼頃だった。深川で食べ物といえば「深川めし」である。江戸資料館の前にある行列のできている店に入った。普段ならその辺を歩き回って行列はできていないがおいしそうな店を探すのだが(かなり危険な賭けではある)、はじめての土地で、時間もなかったことから断念した。隣の店のちょん髷のカツラをかぶった主人が、控えめな声で「ウチの方が安いよ、すぐ食べられるよ」と繰り返しているのが物悲しかった。
 清澄庭園で亀の多さに驚いてから、深川江戸資料館へ入った。この資料館、規模は小さいけれど、江戸の町並みをリアルに再現しており、実際に家の中に上がり込むこともできる。中には昔使われていた家具などがそのまま置かれており、まるで人の家にお邪魔しているような気分だ。人が少なかったおかげで、ゆっくりと見物することができた。特に長屋は、かなり僕のツボに入った。狭い一部屋の中に生活のための様々な機能が集約されており、実に快適そうである。おまけに小さな縁側までついている。展示室の中は照明で昼になったり夜になったりするのだが、夕暮れにその縁側に腰掛けていると、懐かしいようなしみじみとした気分になった。
 資料館を出て、街を歩いているうちにのどが渇いてきた。どこか喫茶店にでも入ろうかと思ったのだが、行けども行けどもそれらしきものがない。のどはどんどん渇いていく。もう情緒ある町並みもまったく目に入らない。体中の水分がなくなったかと思われた時にやっとドトールを見つけたのだが、満席。呆然として交差点にたたずむ僕らの眼に飛び込んできたのは「珈琲舘」の文字。普段は何となく敬遠しているその看板に後光が差しているように見えました。そんな時は店員のおしゃべりも、目障りな客もまったく気にならないものです。水をお代わりし、アイス珈琲を堪能して、すっかりくつろいだ時間を過ごしました。ありがとう、「珈琲館」。またどこかで見かけて、他に選択肢がなかったら、よろしくお願いします。