道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

(詳細はお店のHPでご確認ください)
 ライブハウス・コタン
 ホームページはこちら
          

道草な話

 会社で僕と一緒に働いている元営業部長さん(現在は派遣)は、見た目とは違い、気さくで明るい人である。歳のせいか物忘れが激しいのと、大きな声で独り言を言うのが玉に瑕であるが、仕事の面では随分と助けられている。
毎年健康診断で再検査の通知が来るのだが、「わかっているからいいんだ」と言って無視している。スポーツ(サッカー)をやっているということで健康に自信があるのか、それとも病院嫌いなのか、その辺は良く分からない。昔肺の病気をしたとかで、医者に煙草をやめるよう言われているが、ショートホープをプカプカやっている。まあ、よくいるタイプと言えばタイプである。 
 彼が喉に違和感があると言い出したのは、昨年の11月頃のことである。うまく物が飲み込めないときがあると言う。僕は結構真剣に「すぐ医者に見てもらったほうがいいですよ」と言ってみたのだが、例によって煮え切らない様子である。それ以上僕もその話はしないことにした。おそらく彼は「ほっときゃそのうち直る」と思って(あるいは願って)いたのではないかと思う。
 今年に入ってからもその違和感は一向に収まる気配はなく、ついに彼は病院で検査をしてもらうことになった。それが2月の中旬のことである。そして何度か検査を繰り返した結果、癌であることが判明した。その話を聞いたとき、僕は反応に困ってしまった。癌になった人と接したことがないからである。昔の感覚だと口にすること自体憚られる話題であったような気がするのだが、最近はそうでもないのだろうか。本人が普通にしゃべっているので、普通に受け答えるしかないのだが、彼の中では様々な葛藤や困惑が渦巻いているに違いないと思うと、迂闊なことは口にできないと思ってしまう。希望的な言葉や励まし、あるいは開き直って明るい話題にしてしまうといった事も考えられないではないのだが、どうも嘘臭い。だから返事は極力最低限で済ませるようにしている。特に親しい間柄でもないので、何というか、難しい。
幸い転移はないということだが、3月に入ってからは検査続きでほとんど会社に来られない状態が続いている。これから入院して手術を受けることになるようだ。おそらく当分は、ほとんど仕事はできないだろう。というか、仕事どころではないはずである。治療がうまく行くことを願うばかりだ。
 知人が様々なトラブルに巻き込まれたとき、僕はいつも困惑することになる。どこまで立ち入るべきなのか、どこまで立ち入って欲しくないのか。だから時々冷たい奴だと言われる。そんなつもりはないのだけれど。