道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 子供の頃から、朝食というのが苦手だった。朝、眠い目をこすりながら起きていくと、母親が朝食の準備をしている。メニューは大体決まっていて、ご飯に味噌汁、目玉焼きにサラダといったところである。追い立てられるように洗面所に行き、顔を洗って歯を磨く。そして急いでご飯を食べるのであるが、これがちっとも美味しくない。別に料理自体の味が悪いわけではない。他の人がどうかは分からないのだけれど、僕の場合、味覚が起きるのに時間がかかるらしく、何を食べても味がしないのである。おまけに空腹感を感じることがあまりなく、それで余計に食べさせられているという印象が強かった。そして食べ終わると今度はトイレである。これまた腸が起きていないため、空しい努力に終わることが多い。そして学校へ行ってから便意を催し、それを我慢していると、今度はお腹が痛くなってくる。そんなことを繰り返しているうちに、僕の中ですっかり「朝食=悪者」のイメージが出来上がってしまった。
 朝食さえなければ朝はもっと余裕があるし、お腹が痛くなることもない。それに美味しくないものを無理やり詰め込むという苦行からも解放される。そう思い込んでいたため、一人暮らしを始めてからは、当然のことのように全く朝食を食べなくなってしまった。朝、起きるとコーヒーを淹れ、それを飲みながら煙草を吸うだけという、医者に見せたら間違いなく叱られそうな生活が始まったのである。そんな生活を随分長いこと続けていたのだが、どうもそれは健康に良くないということが、次第に身に染みて分かってきたので、30代の後半から朝食を食べることに取り組みだした。
 最初はシリアルとか、菓子パンといったものから始めたのだが、最近は体が慣れてきたのか、そういうものでは物足りなくなってきたので、トーストに野菜やらハムやらを挟んで食べるまでになった。昔はそんな暇があったら五分でも長く寝ていたいと思っていたものだが、慣れというのは恐ろしいものである。この歳になって、ようやく朝食の恐怖から脱しつつある。
 ところで、僕の理想の朝食とは何かと言うと、やはり旅館の朝ごはんである。朝食を取る習慣がない時から、何故かそれだけは楽しみだった。しかし、和朝食のハードルは極めて高い。いつの日か、そこに辿り着きたいとは思っているのだけれど。