道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 喫茶店に通うようになったのは、高校時代のことである。比較的自由な校風だったせいか、それとも時代がのんびりしていたせいか、下校途中によく友人たちと喫茶店に立ち寄った。そしてコーヒー一杯でねばって、延々とくだらない話をしたものである。その当時は田舎町にもまだジャズ喫茶やロック喫茶なんてものが結構残っていて、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」をはじめて聴いたのも、そんな店の一軒だった。今から思えば、本当に個性的な喫茶店があちこちにあって、今日はどこへ行こうかなんて考えるのも楽しかった。
 そういう喫茶店が、ある時期を境にして次々に姿を消した。実家に帰るたびに、昔通った店がひとつふたつとなくなっていき、いわゆる喫茶店というものをほとんど見かけなくなってしまった。かわりにマ○ドナルドやスター○ックスといった店が続々とでき始めた。特に駅前はひどいものだった。目隠しして連れてこられたら、どこの町かわからないような風景になってしまった。次第に僕は、どこにも立ち寄らず実家に帰るようになってしまった。
 東京に出てきてからも、僕はよく喫茶店に通った。引っ越すたびに近所の喫茶店をチェックし、気に入った店が見つかれば足繁く通った。しかし東京でもそういった店はどんどん姿を消していった。そしてそれと前後するように、僕らの生活も変わっていった。もう昔のように喫茶店に座り込んで、無為な一日を過ごすこともなくなった。喫茶店は入り浸る場所から一休みする場所に変わっていった。そうなってくると、どこにでもあって値段も安いコーヒーチェーンはやはり便利である。会社の昼休みに立ち寄るのもやはりそういった店である。居心地は決してよくない。椅子の座り心地も悪い。毒にも薬にもならないようなBGMがかかっている。でも長居するわけではないし、値段は安い。そんな風にして僕は喫茶店というものと随分疎遠になってしまった。
 それでも、やはり近所に一軒、お気に入りの喫茶店があったらいいなと思う。薄暗くて、座席がゆったりとしていて、新聞や週刊誌が置いてあって、できればコーヒーが美味しくて、カレーライスくらい食べられるような喫茶店があれば言うことはない。しかし今住んでいるところは、近所にファーストフードの一軒すら無いのが現状である。