日本が世界に誇る（？）ファーストフードである立ち喰いそば。その手軽さ、値段の手頃さ、そしてジャンクさは、他のファーストフードにも引けを取らない。何より、日本人の遺伝子に刻み込まれている食文化である。その立ち喰いそばが、最近僕の周囲でその存在感を失いつつある。
今の職場の近くには、少なくとも三軒の立ち喰いそば屋が存在していた。昼めし時になると、どの店にも長い行列ができた。一つは職場のすぐ近くにあるチェーン店の立ち喰いそばで、ここはなんと２４時間営業である。幹線道路沿いとはいえ、果たして深夜にどれほどの客が訪れるのか怪しいところだが、残業で遅くなった時には便利である。ただし、ここは店員の態度が著しく悪い。全く客の方を向いていないし、厨房の中で無駄話ばかりしている。僕は一度この店でカレーライスを頼んで舌打ちをされたことがあったので（理由は不明）、それ以来やむを得ない場合を除いて、その店は使わないことにしている。
少し離れたところにもう一軒あった。昔からそこにあったという風情の、味のある店だったが、早々に店をたたんでしまった。その後居酒屋になったが、これもあっという間に潰れてしまい、それ以来ずっとシャッターが降りたままである。そば屋が無くなった時、常連らしきサラリーマン数人が張り紙を見て、「ひどいなぁ、困るじゃないか」と言っていたのを通りがかりに耳にした。確かに、サラリーマンにとって昼めしを食べる場所が（しかも自分の選択肢に入っている店が）突然無くなるのは困るのである。ローテーションが狂うし、場合によっては新しい店を開拓しなければならない。
そして最後の一軒であるが、ここが最も規模も大きく、清潔で、客あしらいもよかったので、僕はもっぱらその店を愛用していた。もちろん行列は出来るのだが、オーダーをさばく店長のスキルが高く、あまりストレスを感じたことはなかった。ところが、ある日その店長がいなくなった。そして後任の若い店長がオーダーをさばくようになると、突然行列が動かなくなった。最初は大目に見ていた客達も、次第に不平を口にするようになった。それに合わせるように、サービスの質も低下していった。盛り付けが雑になったり、食器が綺麗に洗われていなかったりといったことが目に付くようになった。それでもやはり昼めし時には長い行列が出来ていたのだが、ある日突然シャッターを降ろしてしまった。そんなわけで、僕は久しく立ち食いそばを食べていない。そしてやはりローテーションに頭を悩ませている。牛丼ばかりじゃねぇ･･････。
