道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 今住んでいるマンションの最大の魅力は、その眺望である。ほとんどそれで決めたといっても過言ではない。特に南側は高い建物が視界をふさぐこともなく、実に広々としている。近くにマンションが無いわけではないが、どれも程よく距離を保っていて、目が合ってハッとするようなことも無い。しかし、住み出した当初から気になっていたことが一つある。それは隣の一戸建てを挟んだ南側に、比較的広い月極の駐車場があることである。ただ、随分と昔からそこにあったみたいで、その上いつも満車状態だったので、そうそうつぶされることもあるまい、と高をくくっていた。
 そのうち、その駐車場で何度か怪しい人影を見かけるようになった。車で乗り付けて、駐車場の中をうろうろしている。軽薄そうなスーツ姿が、不動産屋を連想させた。もしかするとそろそろ何か変化があるかもしれないと、漠然と不安になった。そしてそんなことも忘れかけていたある日、突然駐車場の隅で、ボーリングのような作業が始まった。まるで地質調査をしているようである。ますます嫌な予感がしてきた。そしてある朝、起きて外を見ると、その駐車場を埋め尽くしていた車が忽然と姿を消していた。ついに始まったのである。
 まず、僕らが希望的に予想したのは、土地を区切って建売り住宅を幾つか建てるのではないかということである。しかしそれは基礎工事が進むにつれて(その工事の進捗が窓からよく見えるのである)、現実味を失っていった。どう見ても敷地一杯にマンションを建てようとしているとしか思えない。そしてもちろんその通りにマンション建設が始まったのである。
 次に僕らが願望まじりに予想したのは、低層階マンションが建つのではないかということである。階数が低いほど我が家が受けるダメージは少なくて済む。平屋のマンション(そんなもんあるわけが無いが)でも全然OKである。そう思いながら眺めているのだが、残念ながらもう4階建てくらいにはなってしまった。そしてさらに足場は上に伸びている。なかなか都合のよいマンションは建たないようである。そういえば前の部屋を出た時も、目の前の駐車場にマンションが建ったのが理由の一つだった。再び僕らはマンションに追い出されるのだろうか。
 都会でよい眺望や、静かな暮らしを望むのはなかなか難しい。かといって、郊外へ出てしまうのも何となく寂しい。いろいろなことに踏ん切りがつかないまま、僕は毎日その工事現場を眺めている。