道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 ゴールデンウイークに、大阪に行くことになった。古くからの友人の家に遊びに行くのである。以前は頻繁に訪れていたのだが、子供ができてからはさすがに足が遠のいてしまった。子供がようやく長い距離の移動にも耐えられるくらいになってきたので、思い切って出かけることにしたのである。
 今回の旅行には、懸念事項が幾つかあった。まず、子供が長時間の移動に飽きないかという問題である。ただ、最近息子は異常なほど乗り物(特に電車)に興味を抱いているので、この点はまず大丈夫だろう。次に、人見知りの問題である。初対面の人の場合、激しく人見知りをすることがあるのだが、これも時と場合によるので、あまり考えても始まらない。そして何といっても最大の問題は、彼の家では犬が放し飼いになっているという点である。
 事前に電話した際、この点を彼も心配していた。以前彼が犬を飼い始めた頃に送ってもらった写真には、かわいい子犬が写っていたのだが、みるみる大きくなって、今では体重が18キロもあるという。そしてとにかくやんちゃで人懐っこいというのだ。「噛んだりするかね」と尋ねると、「噛むかもしれない」という返事。鎖につながれた小型犬しか見たことのない息子に、巨大な犬がいきなりじゃれついてきたからどうなるか、甚だ心配である。僕自身が子供の頃に犬に足を噛まれて、長いこと犬恐怖症に悩まされた経験があるので、息子には同じ思いを味わってもらいたくない。悩んだ結果、とにかく犬の相手は僕が引き受けると決心して、新幹線に乗り込んだ
 京都でローカル線に乗り換え、さらにタクシーに乗って、息子が乗り物に満足したところで彼の家に辿り着いた。玄関を開けると、待ってましたとばかり犬が駆け寄ってきた。最初が肝心である。僕は、(実は未だに犬と触れ合うことがそんなに得意ではないのだが、)意を決してその犬を抱き止めた。幸い息子は泣き出すこともなく、こわごわとではあるが、興味深そうに犬を眺めている。それはいいのだが、積極的だったせいか、僕はその犬に大変気に入られたらしく、油断するたびに襲い掛かられ、顔中を舐められる羽目になった。
 翌日、僕らが無事彼の家を去った後、その犬は体調を崩し、何度も吐いたという。犬は犬なりに気を使ったのかもしれない。友人夫妻の結論は「大久保を舐めすぎて悪い菌でももらったのではないか」ということになったらしい。それはあんまりだろうと思いながらも、僕は自分が心密かに、その犬との再会を楽しみにしていることに気がついた。