道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 東京スカイツリーの開業に沸く週末、僕らは上野駅に降り立った。快晴の日曜日。きっとみんなスカイツリーに行っているに違いないとやってきた上野公園は、しかし人で溢れ返っていた。落胆しながらも僕は息子の手を引いて、人ごみの中を歩き出した。
 今日は息子の動物園デビューの日である。今まで絵本でしか見たことのなかった動物達に生で会えるのである。僕は彼が檻の前で目を輝かせている姿を想像し、ひとりほくそえんでいた。しかし、現実はそうそう上手くはいかない。イメージの中ではゆっくりと見学できているのだが、実際は人ごみに揉まれながら彼を抱き上げて檻の中の動物を見せることになる。後ろで待っている人もいるので、好きなだけ居座ることもできない。そして見るべき動物がたくさん待っているので、次から次へと檻を移動することになる。おまけに暑いせいかそれとも時間的な問題なのか、動物たちが見やすい位置に居てくれない。息子にしてみれば自分のペースで見られないし、せっかく覗いた檻の中に肝心の動物を見つけられないし、人が多すぎて落ち着かないしで、次第に機嫌が悪くなるのも仕方がない。おまけにレストランもベンチもいっぱいで、なかなかお昼ごはんにありつけない。そんなわけで、現在鉄道にはまっている彼のためのメインイベントである園内のモノレールに乗る頃には、順番待ちの列の中で号泣状態となった。
 何とかなだめて、モノレールに乗ったあたりで、僕はかなり疲れ切っていた。そこで切り上げても良かったのだが、せっかく来たんだからというわけで、何とかレストランの席を確保し、お昼ご飯を食べた後、残りの動物達を見て回った。しかし息子の機嫌は、あまり回復しなかった。
 全部見終わって、動物園を出た辺りで、またしても息子がぐずり始めた。その時通りかかったおばさんグループに子育てのことでからかわれた瞬間、僕は久しぶりに自分の中で「ブチッ」という音が聞こえた。妻が引き止めなかったら、僕はそのおばさん達に食ってかかって行ったに違いない。それくらい心身共に疲労困憊していた。後味の悪さを残して、上野を後にした。
 しかし、どうやら息子には楽しい時間だったらしい。その後しばらく見た動物や、モノレールの話ばかりしていた。だからこれに懲りずに、またどこかへ連れ出そうと思っている。考えてみれば、親が振り回され、疲れ切ってしまうのは、当たり前のことなのだ。何と言っても、相手はまだ子供なのだから。