道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 実家に息子を連れて帰ると、よく僕が子供だった頃の話題になる。年寄りの話すことだから、大抵いつも同じようなエピソードを聞くことになる。僕自身の記憶に残っていることもあれば、そうでないこともある。特に小学校へ上がる前の出来事はろくに憶えていないので、聞いているとそれなりに楽しい。大抵のエピソードは楽しい出来事である。きっとそういうことが親の心の中には大切にしまわれているのだろう。嬉しそうにそういう話をしている親を見ると、少しは自分も親の役に立っているようでホッとする。僕の中では、中学・高校の頃の反抗期(今思うとかなり陰湿だった。)の印象が強いので、そしてその後も決して親を安心させるような人生を送ってきていないので、未だに申し訳ない気持ちが強い。だから聞き飽きたようなエピソードであっても、努めて相手をするようにしている。
 ところで今回、はじめて話題に上ったことがある。それは僕の中では、かなり長い間恨みとして残っていた出来事である。それは僕が小学5年生の頃の話なのだが、かなり激しい自転車ブームがあった。今は全く見かけないが、かなりデコラティブな自転車が子供の間で大流行したのである。自動車のシフトレバーのような大げさな変速機がついていて、ライトも大きく、ウインカーまでついているのもあった。一番派手なやつはリアにもブレーキランプやウインカーがついていて、それが流れるように点滅する。もはや子供版デコトラの世界である。みんなそういう自転車に夢中になり、それぞれ自分のやつを得意気に乗り回していた。僕も勿論夢中になった。しかし、親は金がないといってなかなか買ってくれない。僕はカタログを熟読し、子供ながらに精一杯譲歩した機種を選択して交渉したのだが、結局中学に入ったら買ってあげるということになり、その後その話はうやむやになってしまった。この件については、しばらく僕は親の狡猾さにひどく腹を立てていた。はじめから買う気など全くなかったに違いない。上手く丸め込まれてしまったと思っていた。そして今回、思いがけず父がその話しをはじめた。その時はやはりどうしても買うお金がなくて、結果としてだますような格好になってしまって済まなかったと言った。僕はもうすっかり忘れていたのだが、改めてその時のことを思い出し、親がどんな気持ちでいたかを知って、何と言うか、とてもうれしかった。
 僕もいつか同じような状況で、今度は親の立場で同じような選択をするかもしれない。その時は、きっと父の顔を思い出すに違いない。