道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 年末からひき込んだ風邪がようやく治りかけてきたその日、妻の両親と一緒に水族館へ行くことになった。孫が楽しめるようにという配慮であったが、当の息子は家に居たいと言い出した。彼にとっては珍しいオモチャ(実際にはオモチャではないものも多数あるのだが)がある義父母の家で遊んでいる方が楽しいと思ったらしい。何とか言いくるめて車に乗せて目的地へ向かった。病状によっては留守番をする覚悟でいた僕も、どうにか間に合って一緒に出掛けることができた。
 お目当ての水族館の駐車場はいっぱいで、車を少し離れた別の駐車場へ止めることになった。車から見た外観の印象から、何となくガラガラに空いているような気がしていたのだが、中に入ってみると実際には大盛況だった。おそらく正月休みで実家に遊びに来た家族なのだろう。子供連れの家族とお年寄りの姿が多く目についた。地方の古くからある観光スポットは、開業当初の輝きを失って、疲れ切って見えることが少なくない。何となく投げやりな空気が漂っていたりする。ところがここはそういう雰囲気が全くなかった。というか、僕は結構この水族館が気に入ってしまったのである。
 まず、見せ方がとてもシンプルである。まるで美術館の絵画のように、水槽が壁に並んでいる。それを壁に沿って見て回るだけである。館内の照明は適度に明るく、かといって水槽が見にくいわけでもない。部屋の中央にはベンチがあって、疲れたらそこに座って眺めればいい。自分たちが見てきた水槽がすべて見渡せるので、もう一度見たいと思った水槽にまっすぐ行くことができる。
 そして、規模がちょうどよい。一通り見終わってもそんなに疲れない。時間的にも手頃である。面白かったね、さて次はどこに行こうか、という気分になれる。大体一度にそんなに大量の魚を見せられても、途中で飽きてしまう。興味や集中力を、最後までそれなりに維持できるのがありがたい。
 都心にある有名な水族館は、暗い照明や、迷路のような順路や、派手なパフォーマンス等で演出過剰なところがある。そういうところへ行くと、なんとなく魚以外のものの印象ばかりが残ってしまう。そもそも魚を見に来ているのだから、魚が見やすいのが一番である。
 ラッコも、シロイルカも、ジンベエザメもいなかったけれど、何か暖かい雰囲気の中で普段スルーしがちな魚をじっくりと観察できた。
 僕は結構満足して水族館を後にした。風邪も大分良くなったようだ。