道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 毎年、年末に忘年会があって、それは学生時代からの気心の知れた仲間内で開催されていた。日頃は全く付き合いのない仲間であるが、年に一度そうやって集まって、お互いの現状やら、昔話やらに花を咲かせるという、楽しい飲み会である。最近ではほとんど酒を飲むこともない僕にとっては、安心して酔っぱらえる数少ない機会で、毎年心待ちにしていたのであるが、最近何となく風向きが変わってきた。出席者が増えてきたのである。率先して幹事をやってくれている友人が、そういう方向性を模索し始めたのである。昨年はその傾向が一層強まって、完全に同窓会になってしまった。別に同窓会が嫌だというわけではない。ただ僕はその「気心の知れた仲間内の忘年会」というものがとても貴重で有難いものだと思っていたので、それが無くなってしまったことが寂しかったのである。そうなるとへそ曲がりの僕はどんどん依怙地になってしまう。結局去年の忘年会は欠席することにしてしまった。大人気ないといえば非常に大人気ない話ではあるが、まあ普段はいろいろと気を使って生きているので、たまには我儘になってもいいやなんて思っていた。
 ところが困ったことが起こった。その会に出ないと仲間の近況が伝わってこないのである。悩んだ末、一番近況を知りたい友人にメールして、飲みに行くことにした。一昨年の忘年会で仕事を辞めたと聞いて、その後どうなったのか気になっていたのである。彼は快く応じてくれた。僕らは学生時代によく遊んだ街で、久しぶりに飲むことになった。
 彼は幸いなことに元気だった。但しまだ仕事はしていなかった。僕らはすっかり変わってしまった飲み屋街を彷徨い歩いて、ようやく昔通った店を見つけた。その店が入っていた古い雑居ビルが新しいビルに建て替わっていて、見つけられなかったのである。当然、店内のレイアウトもすっかり様変わりして、昔酔いつぶれた仲間が転がっていた座敷は無くなってしまっていた。それでもそれなりに懐かしい気分で、僕らは酒を飲んだ。
 彼は、僕が忘年会を欠席した理由は見当がついていたと言った。昔ならそこで説教をされるところである。(僕はよく、仲間に説教された。それは僕が世間知らずでお子様だったからである。)しかし彼は「まあ、気持ちはわかるけどね」と言っただけだった。そしてその言葉の裏側にあるものに、僕はそっと諭されているのであった。いい歳をして、僕はまだお子様なのである。
 ともあれ、久しぶりに楽しい夜であった。