道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 春といえば、引越しの季節である。この時期になるとあちこちで引越し業者のトラックを目にするようになる。進学や就職、転勤などで新しい街場所へ移り住む人も少なくないだろう。僕が田舎から東京に出てきたのも、丁度この時期である。初めての一人暮らしに胸躍らせていた。その頃の僕は、とにかく早く一人暮らしがしたくてうずうずしていた。誰の目も気にすることなく、自分の好きなように暮らすことができるなんて、何てすばらしいんだろうと思っていた。引越しの荷物も簡単なもので、布団と食器ぐらいで済んでしまったので、父親の車に積み込んで全部運んでしまった。四畳半一間の、狭いアパートの部屋も、荷物が少ないせいか随分広く感じたものである。
 何にも分からないところから始まった一人暮らしも、慣れてくるにしたがって、自分がどんな部屋を求めているかが次第に明確になってきた。そういったものを少しでも向上させようと、何度か引越しをした。そしてようやく求めていた部屋にめぐり合ったのが、20代半ばである。その部屋には10年近く暮らした。僕の人生に変化がなければ、今でもその部屋に暮らしていたかもしれない。しかし、ささやかな僕の人生にも多少の変化があって、再び引っ越すことになった。今度は一人ではないので、ぐっと広くなり、部屋数も増えた。そしてちょっとしたゴタゴタがあって、再び引っ越すことになった。それが現在の部屋である。古いけれど気持ちのいい部屋で、気に入って暮らしている。
 そしてまたしてもささやかな僕の人生に多少の変化があって、今再び引越しを考えている。家族が増えると荷物も格段に増えるし、部屋探しの条件もいろいろと複雑になってくる。勿論家賃だって深刻な問題である。昔みたいに一目惚れで決めるわけにはいかない。そして荷造りも一大事業である。体力も衰えているし、おまけに今では腰痛持ちである。
 それでも新しい部屋を探すということは、何かしら心楽しいものである。そこにはどんな街があって、どんな店があって、どんな生活を送ることになるのか。そんなことを考えながらネットで物件を眺める日々が続いている。なかなか希望に沿った物件は現われないけれど、粘り強く探していこうと思っている。
 一体あと何回引越しをすることになるのだろうか。そもそもあと10年もしたら、どんな街に住んでいるのだろうか。正直なところ全く想像できない。そんなことを呑気に言っていられる歳でもないのだけれど、それが現在の僕の偽らざる心境である。