道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 爆弾低気圧が通過した日曜日、だぶだぶの制服を着た息子を連れて、我々は幼稚園へ向かった。今日は入園式である。初めて息子が社会生活を経験する第一日目である。制服を着て歩く息子を眺めながら、僕は少なからず感慨深くなった。何とか無事にここまで辿り着いた。しかしこれから先の道程の方がはるかに大変で、そして長いのである。それを思うと、感慨に浸ってばかりもいられない。というか、不安がのしかかってくる。大丈夫か?
 幼稚園に到着し、受付を済ませて会場へ入ってみると、何だか不思議な光景が広がっていた。ステージにと向かい合うように新入園児たちの席があり、それを横から眺めるように保護者席がある。ところが保護者席はガラガラで、その保護者席の脇の通路部分にスーツ姿のお父さんたちが、ぎっしりと立っているのである。僕はしばらくぼんやりと眺めた後で、それがビデオ撮影の場所取りであることにようやく気づいた。保護者席に座っていては我が子の姿をカメラに収めることができないのである。改めて彼らを見ると、みんな手に最新鋭のビデオカメラを抱えている。そこにはもう僕の入り込む余地は残されていなかった。その上、僕はビデオカメラさえ持っていないのである。仕方なく少し離れたところに立って、入園式を見物することにした。
 式が始まると、ビデオカメラが一斉に回り始めた。みんな可能な限り手を伸ばして、少しでもいいアングルで我が子を撮ろうとしている。手を振ってカメラのほうを振り向かせようとするお父さんもいる。子供の方はどうかというと、勿論じっとしているはずもなく、立ち上がってしまう子供、泣き出す子供、親の方に手を振っている子供など様々である。そういえばウチの息子もその中にいるはずであるということを思い出し、探してみると、一番はじっこの方の席におとなしく座っていた。最初のうちは不安そうで、保護者席の方をちらちら見ていたのだが、親の姿を見つけることを諦めたのか、ぼんやりとステージを眺め続けていた。きっと親子ともども場違いなところに居合わせてしまったような雰囲気を醸し出していたに違いない。
 しかし場違いでは済まされない。彼は幼稚園児の一人として、その社会の中で生活することに順応していかなければならないし、親はその「園児の保護者」としてさまざまな形で関わっていかなければならない。まあ、子供はそのうち順応していくだろう。問題は親の方だ。僕は偏狭な人間である。それが息子の人生に影を落とさないようにできるだけ努力したい。できるだけ……。