道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 4月の終わりに、幼稚園の遠足が予定されていた。息子は大はりきりである。それが雨で一日延期になり、僕らはテルテル坊主をたくさん作って寝たのだけれど、次の日も延期になった。延期の連絡を聞いて、彼は大声で泣いた。何とかなだめすかして幼稚園に行かせたが、これで明日も雨だったら遠足自体が中止になる。それだけは何としても避けたい。息子は絶望のあまり家出してしまうかもしれない。お弁当の材料だって無駄になってしまう。幸い、次の日は快晴で、ようやく彼にも笑顔が戻った。
 遠足とは読んで字の如く、遠くまで足を伸ばすことである。頑張って歩いて、目的地に着いて、素晴らしい景色と心地よい疲労感に包まれながらお弁当を食べるのは、とても気分がいいものだ。しかるに何ぞや、新宿御苑とは。しかも現地集合とはどういうことか。いくら幼稚園児とはいえ、もう少し遠くに行ってもいいのではないか。そんな親の憤懣をよそに、息子はおおはしゃぎである。
 大型連休中ということもあり、父親も参加する家が多いのではないかという予測のもと、僕も参加することにした。しかし、現地に着いてみると父親たちの姿はどこにもない。園児とお母さんたちの集団の中で、僕は途方に暮れることになる。記念撮影だって、親子ゲームだって、僕は常に異端者である。でも、心優しいお母さんたちはさりげなく僕を無視してくれたので、何とか逃げ出さずにすんだ。こっそり喫煙所にタバコを吸いに行った時も、悠然とタバコをふかすお母さんがいたりして、ホッとしたものだ。
お母さんたちを眺めていて感じたのだが、皆とても泰然自若としているように見える。子供がどっかに行っても、転んで泣き出しても動ずることがない。それは、生まれてからここまで育て上げてきた自信のようなものかもしれない。僕なんかどちらかというと、ハラハラして見てしまう。すぐに手助けをしたくなってしまう。まだまだ修行が足りないのである。
 息子は友達と遊んで、お弁当を食べて、また友達と遊んで、おまけにアイスクリームまで食べて大満足である。彼が友達と楽しそうに走り回るのを間近に見るのは初めてだったので、僕も嬉しかったのだが、明らかに他の子と比べて動きにキレがない彼を見て、もっとアクティブな遊びに連れ出してあげなければいけないな、と反省した。
 帰りの電車で、息子は仲良しの友達と並んで座っておしゃべりをしていた。僕は重たいバッグを背負ったまま、そんな彼をずっと眺めていた。