道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 人間の体というのは、個人差はあるにせよ心の影響を少なからず受ける仕組みになっているようだ。簡単な例を挙げれば、緊張するとお腹が痛くなるとか、汗をかきたくないと思うと発汗がより激しくなるとか、ストレスが溜まると脱毛症になるとか、血圧計を前にすると血圧が跳ね上がるとか、まあ、そういったことである。いずれも自分で経験したことばかりなので、共感しない人もいるかもしれない。しかし内容は違っても、少なからず同じような経験をしたことはあるのではないだろうか。全然ない?いやいや、そんなことはないでしょう。いくら何でも・・・(汗)。
 僕は20年位前から、左上腕部に消えないしこりのようなものがある。元を正せば虫に刺された跡で、痒みがしつこいので掻きまくっているうちに、いつの間にかそうなってしまった。ただ、別段支障もないし、特に変化があるわけでもないので、そのままうっちゃっておいたのである。それが数年前に父親に見咎められ、医者に見せた方がいいと言われてから、何となく気にするようになった。そしてこの春、生活がひと段落してほっとした頃に、患部に変化があることに気づいたのである。ひょっとして、これは悪性のものではあるまいかという不安が頭をよぎり、とにかくしばらく観察して、不安が解消されないようであれば、早急に医者に行こうと考えていた。
 そんな中、別の不安材料が複数同時に発生するに至って、僕は精神のバランスを著しく欠いた状態になった。するとそれと呼応するかのように、僕は左腕に違和感を覚えるようになったのである。ある時は痛みを伴い、ある時は痺れを感じ、しまいには力が入らなくなってしまった。「もう駄目だ。」と僕は思った。医者に見せるのも恐ろしいけれど、今の精神状態にこれ以上耐えられない。僕は意を決して、皮膚科に行くことにした。
 落ち着いた感じの女医の先生は、じっくりと僕の左腕を確認した後、悪性のものではないと告げ、塗り薬で治るので出しておきますねと言った。僕は勿論ほっとしたのだけれど、以前の健康診断の再検査で異常なしと言われた時のような、湧き上がる解放感を感じることはできなかった。その理由はある程度分かっている。しかし、結構しんどい思いをしばらくしたんだから、もう少しふわっとした気分になったっていいんじゃないか。
 僕は釈然としない思いで、煙草をふかしていた。