道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

4月のとある日曜日、一家で花見に出かけた。ここ何年かはバタバタしていてそれどころではなかったので、久しぶりの花見である。その日の朝、息子が歯科矯正でブリッジを付けることになっていて、痛みがひどくなかったらそのまま出掛ける計画だった。幸い痛みも少なく、よく晴れた暖かい天気で、我々は目的地の公園に向かった。

その公園は桜の名所として有名で、昔よく行っていた頃は大勢の人で賑わっていたのだが、その日は意外と空いていて、息子のお目当てのボートにもあまり待たずに乗ることができた。池の上から眺める桜は、満開をやや過ぎたところではあったが、十分に綺麗だった。僕らは桜がよく見える場所で漕ぐのを止め、波に揺られながら桜をぼんやりと眺めていた。

ボートを降りて、公園内を散策した。桜の下はやはり花見客でいっぱいである。しかし、以前一番賑わっていた場所が立ち入り禁止のロープが張られていて、そこに毎年出ていた大きな屋台も姿を消していた。おそらく近隣住民から苦情が来たのだろう。公園の周囲は高級住宅街で、景色を楽しくむために窓を大きくとった立派な一軒家が建ち並んでいる。しかし中に住むのは心の狭い人たちであるようだ。

昔、妻と初めて住んだのがこの公園の近くだった。高級住宅街の外れに建つ安いアパートから、よく散歩に来たものである。(そのアパートは契約更新の際に大幅な値上げで事実上追い出された。)その次に住んだ賃貸マンションも遠くはなったが、自転車なら来れる距離で、まだ小さかった息子を連れて遊びに来た。公園の中に神社があって、お宮参りや初詣の際にもこの公園を利用したものである。(この賃貸マンションは取り壊しで追い出された。)今ではだいぶ遠くなって、今回も電車に乗ってやって来た。最初は存在してさえいなかった息子も、今では小学4年生である。時の流れを感じないわけにはいかない。(今のマンションは購入したので、追い出されることはないと思う。)

 屋台をひやかした後、ベンチを確保して、思い思いに食べたい物、飲みたい物を買ってお昼ご飯の代わりにした。昼間っから公園でビールを飲むなんて、本当に久しぶりのことである。息子はゼリーだと思って買ったのが水あめで、矯正したばかりの歯で食べられなくてガッカリしている。仕方がないので輪投げの屋台をやらせてあげて、残念賞でもらったお菓子を食べて機嫌を直していた。息子が笑うと、付けたばかりのブリッジが春の日差しにキラリと輝いた。