道草の友(シンガーソングライター・大久保雅永の日々)

ライブ情報: 4/13(Sat)open:17:30 start:18:00 ライブハウスコタン(20:00頃出演)

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 ライブハウス・コタン
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道草な話

 いつものように電車に揺られていた。ひさびさの電車通勤にも、通勤ルートにも慣れて、いつもと同じ時刻の電車に乗っていた。日もいつの間にか短くなって6時過ぎにはもうすっかり暗くなっている。ぼんやり窓の外を眺めながら、もうすぐ最寄り駅に着く頃だと思っていたら、突然急ブレーキがかかった。その辺りはよく時間調整で止まるか止まらないかくらいまで速度を落とすことがあったのだが、この日は違った。電車は完全に停止し、車内は静まり返っている。しばらくして車掌のアナウンスが流れた。僕の降りる駅で人身事故が発生したというのだ。それだけ告げると放送は止んだ。かなりあわただしい雰囲気だけが伝わってきた。しばらく待つと、再びアナウンスがあった。運転再開の見込みは20時10分頃だと言った。車内に動揺が走った。「にじゅ・・・」という声があちらこちらから聞こえた。現在の時刻は18時50分である。混み合った車内で立ったまま1時間20分程待たされることになったのである。

 皆慌ただしくスマホを操作し始めた。家族に連絡しているのだろう。電話をかけている人もいる。アナウンスでは大変危険なので絶対に車外に出ないようにと繰り返し呼びかけている。問題は目の前の駅で人身事故が起きたことだ。一つ先の駅まで進んで振り替え輸送を利用することもできない。しかも止まっている場所からして、少し歩けば最寄り駅に着けそうな場所である。ここで1時間20分じっと立って待っているのはいささかつらい。降ろしてくれればすぐ家に帰れるのに。

 こういう時に騒いだり暴れたりしないのが日本人の特徴である。皆静かに次のアナウンスを待っている。だから僕も大人しく待つことにした。目の前の老人はかなり辛そうである。

 幸い(?)50分程で運転が再開された。電車を降りた時にはぐったりと疲れていた。僕はその辺の飲み屋で一杯やりたかったけれど、そんな店もそんな金もなかったので、仕方なく足を引きずりながら歩き出した。